アとは、私が上に述べたことを機械的に、杓子定規的に解してはならぬといふことである。即ち、先づ生産力が生産関係に影響し、生産関係がその他の経済条件に影響し、経済条件が政治形態に、政治形態が法制に、法制が道徳習慣思想感情等に、次々に目白押しに影響して来るものであるなどゝ考へてはならぬ。社会現象はそれ程簡単ではない。私はたゞ、比較的根本的な要素を先に挙げたゞけに過ぎぬのであつて、以上の条件は互に他に作用を及ぼすと同時に他から反作用を受けてゐるのである。これ等の条件の及ぼす力は一方的でなくて相関的なのである。たとへば政治組織がその時代の政治思想を条件づけることは事実であるが、それと同時に、その時代の政治思想も亦、政治組織に対して活発に作用してゐるのである。ブハリンはこのことを社会の諸要素間の平衡[#「社会の諸要素間の平衡」に傍点]と名づけてゐる。
四
以上で、私は、文学作品に及ぼす各種の力を大体分析し終つた。私が以上に挙げたゞけでも、それは甚だ複雑であるが、実際はこれよりも遙かに複雑であることを理解しなければならぬ。ある文学作品を生んだ地理的環境のみからその作品を論じた
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