Bや工場ができて、社会の生産力が非常に進んで来ると、かくの如き機械や工場は、凡ての生産者がめい/\所有することは不可能でもあり不必要でもあるやうになつて来る。そこで、これ等の生産機関は一部少数の人の手に握られ、これに反して大多数の生産者は自己の生産機関をもたないで、生産機関の所有者に労働力を提供し、その代りに、賃銀を受けとつて生活するやうになる。これが即ち資本主義である。
 かくの如き経済関係の変化は、必然的にその社会の政治形態の変化を決定する。即ち、ある社会の政治形態は、どうしてもその社会の経済関係に適応したものとならざるを得なくなつて来るのである。たとへば中世時代の手工業と幼稚な交通機関と土地の生産力、農業を基礎とする経済関係とは必然的に封建政治を生み、工業の[#「工業の」は底本では「工業と」]発達と交通機関の進歩と、資本の抬頭と商業の拡大とは漸次国家の統一、ついではデモクラシイの政治を必要として来る。更に進んで、国際商業の発達、資本の集中と国際化とは、一方に於て帝国主義を生み、他方に於て政治の国際化を必要として来る。そして後者はおそらく社会主義の時代になつて、はじめて完全に実現さ
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