た結果は完全に真理である。けれども、太陽を規準にするのが最も簡単であり便利であるのである。即はち、ポアンカレの主張は、決して真理の任意性をゆるすものではなくて、真理の唯一なることは十分にみとめてその表現の規準を便利といふことにおいたのである。
ところが、種々のイズムの文学理論を、同じ権利をもつてゆるすことは、真理に種々あることをゆるすことになる。それは論理の根本原則と明白に矛盾する。それ故に、私は、種々の立場からの文学理論が、いずれも同様に正しいといふ説にくみすることはできない。
こゝで私たちは、見かけ上最もまことしやかな弁駁にぶつゝかる。即はち存在するものは凡て合理的であるといふ説、それから、凡ての理論はそれ/″\真理の一部を蔵してゐるのであつて、絶対真理といふものはないといふ説とがこれである。
これ等の説の正否は、かゝつて、その解釈のしかたによる。存在するものは、凡べて理由をもつてゐるといふ意味に解するならば第一の説はたゞしい。たとへば、ロマンチシズムの文学が生れたのには、それが生れる理由があつたのであつて、気紛れに生れて気紛れに滅びたのではないと解するならばこの説は正しいと
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