もつと実際的な問題としては物語りの長さである。普通の小説は平均八万語内外のものが多い(日本文に翻訳すると約二十万字見当である)。ところが、最もよく売れる小説は、一般にこれよりも大分長い。“If Winter Comes”“Peter Jackson”“Sonia”“Sinister Street”“The Woman Thou Gavest Me”“The Green Hat”“The Way of Revelation”“The Rosary”“The Middle of The Road”等の人気のある小説はどれを見ても普通の小説よりも長い。しかし、この理由はよくわからない。同じ定価でなるべく分量の沢山あるのを読者が好むからなのか、それとも大衆に受けるやうな小説は相当スケールが大きくなければならんので、短い紙面では書きあらはせないからなのかも知れない。
 以上は既刊のよく売れた小説を基礎にしての立論であるが、その他に、出版の時機が小説の売れると売れないとに大関係がある。“If Winter Comes”も丁度よい時期に出た。“The Middle of The Road”が若し一九
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