もつてゐる有力な政党であるならば、レーニンが言つたやうに文学者には最大限の自由を与へなければならぬ[#「文学者には最大限の自由を与へなければならぬ」に傍点]といふ見解を支持するであらう。といふのは政治的にはクーデタが有効な場合もあり、経済的には最も峻厳な諸種のレギユレーシヨンが必要である場合もあるであらうが、文学は、その本来の特殊性のために、さうした厳密な政治的規定を与へる瞬間に、その効果、従つてその価値を減殺してしまふからである。その価値[#「価値」に傍点]が社会的な価値であることなどはこの場合きまりきつたことで問題は起らない。私はそんなことを問題とするために「政治的価値と芸術的価値」を書いたのではない。この価値は、社会的価値であることは無論であるにしても、それは、他のものの社会的価値、米や酒のもつてゐる社会的価値とも、宗教や科学がもつてゐる社会的価値ともちがつた、芸術的価値[#「芸術的価値」に傍点]であるのである。このことはあとで説明する。
 ところでこの場合レーニンが文学者には最大限の自由[#「最大限の自由」に傍点]を与へなければならぬと言つたのは、無制限の自由[#「無制限の自由
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