になる。マルクス主義は社会に階級を発見した。それは不朽の功績であつた。だが川口氏の階級のやうな不思議な力をもつた階級を発見した名誉は川口氏自身がほしいまゝにすべきものであらう。
古今の芸術の傑作がすべて芸術性[#「芸術性」に傍点]をもつに拘らず芸術的価値をもたないといふ説は蔵原、勝本説を祖述するもので、そのソフイズム的性質は既に私が証明したところのものである。
だが、つけ加へてこゝで言つておくが、これ等の諸君が、芸術的価値といふ言葉そのものがどうしても気にくはぬといふなら、私は芸術性といふ言葉とかへてもよい。この芸術性はマルクス主義文学の作品にも然らざる作品にも共通したものであることは、之等の諸君が挙つて認めてをるものであり、この芸術性が芸術を芸術たらしめてゐるものであることも亦、以上の諸君にひとしく認められてゐる。しからばこの芸術性の大小、強弱、濃淡によつて、その芸術の価値[#「価値」に傍点]がはかられるのは当然ではないか。
川口氏は私のやうな議論は「無用な混乱をひき起す危険をもつてゐる」と言はれる。だが、氏の頭の中に矛盾のまゝでそつとしまつてある観念に、一度混乱を惹き起させる
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