式をもつて漫然と問題に向ひ、大宅氏は私の文章から、言葉だけを拾つて、問題そのものは氏自身の頭の中で組み合はせて、更にそれを壊して見せられたのであるが、勝本氏は問題の意味を正しく理解することにつとめられたといふことができよう。
先づ「芸術的価値の正体」の中に展開されてゐる氏の価値論は、結論としては正しいことを私は躊躇なく承認する。
『我々は芸術の芸術たる姿を政治的見地からの側面や、商業的見地からの側面やその他の各種[#「各種」に傍点]の側面やをすべて切り払つて、それから離れての「純粋」な方向に見ようとする態度の誤りであることを覚らなければならない。さういふ風にして行けば、芸術の、従つて芸術的価値の正体は、何もなくなつてしまふのである。……我々はさうした方向とは反対に各種の複雑な側面をもつ全的芸術現象をこそ芸術の姿として見、その内面に統一されてゐる各種の観念の複雑な全結合をこそ、そのまゝ芸術の内容として認め、あらゆる社会的条件と連合した社会的尺度によつての社会的価値をこそ、その芸術品の真の価値であると主張したいのである……』
これが大体に於いて氏の結論である。そしてこれは私の考へと殆ん
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