されずに、かゝる問題は、既に一応片附いた問題であるとして通り過ぎようとされてゐるのである。
 この論文は、あの問題に対する批判者の批判を批判しつゝ、でき得べくんば、もつと系統的な姿に於いて、問題の所在を明かにする目的をもつて書かれるのである。私はせめて私の提出した問題の意味が正しく理解されることを希望するのみである。

         一 私はマルクス主義文学を如何に解したか又解するか?

 私は先づこの初歩的な問題から説明してゆく必要を感ずる。何故かといへば、私は前記の論文でマルクス主義文学について論じてみたに拘はらず、マルクス主義文学とは何かといふ問題を多くの批判者は私と同じやうには理解してゐないやうに思はれるからである。そしてこの出発点に於ける些かの見解の相違は、到達点に於ける千里の差となつてあらはれてゐるからである。
 私はマルクス主義文学とはマルクス主義者の文学、即ちプロレタリア前衛の文学であると解釈する。従つて、それは一定の、意識された任務をもつてゐる文学である。そしてこの任務は、個人の霊感によつて感得せられるものではなくて、マルクス主義政党の最高方針によりて規定されるも
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