に、私の前の提言が如何にも粗雑であつたこと、そして全く妥当を欠いた引例などもあつたことに気がつくやうになつた。
とは言へ、私の提出した問題の最も根本的な部分は、依然として未解決のまゝに残されてゐるし、問題自体が、前記諸氏の大部分の人々によつて、私の当初の目的とは全く別な方向へ展開せられ、いはゞ側線へ導かれて、一見簡単に片附けられてしまつたやうな観を呈した。私の批判者の大部分は、私の提出した問題を他へそらすためのポインツマンの役割を演じたに過ぎなかつた。
これには勿論私自身の、あの小論文を起稿するに際しての甚だしき不用意、用語の不注意、引例の不妥当、論理の混迷、非系統的に問題を無暗にひろげてしまつたこと等が禍ひしてゐることは私の躊躇するところなく認めるところである。だが批判者たちが、先づ事実から出発することを忘れて、粗笨な公式で事実を無理矢理に規定してしまひ、かくて問題を問題として取り上げることを拒んだことも認めなければならぬと私は考へる。
といふのは私の提出した問題が、私の意味する通りに理解された場合は殆んどなかつたからである。そしてこの問題の実践的重要性は遂に何人によつても発見
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