」に傍点]に決定されるものだと信じてゐる」とわざ/\ことはつてゐるのに、それを詳しく説明しなかつたといふ理由で、多くの批判者から手厳しい批判を受けた。
 だが、この批判は、厳密にいへば批判とは言ひがたい。何故なら、私が今更くど/\しく説明する必要はないと思つた事柄を、どんなに詳しく説明したつて、それは私の理論の補足になつても批判にはならぬからだ。たゞ、私の批判者たちが独創的である点は、芸術的価値が社会性をもつこと、社会的に決定される[#「社会的に決定される」に傍点]こと、換言すれば社会的価値[#「社会的価値」に傍点]であることが証明されゝば、芸術的価値は如何なる意味に於いても成立しないと考へ、そのついでに、私がまるで、芸術的価値は社会から絶縁され、孤立されて、天からでも降つて来たやうに存在する価値であると信じ又言つたかの如く曲解[#「曲解」に傍点]し曲言することであつた。
 凡そ社会の現象はすべて何等かの社会的価値をもつ。自然現象でも、社会と連関する限りに於いては社会的価値をもつ。たとへば、水力は、人間が全然これを利用し得なかつた時代には一つの自然力としては存在してゐたに相違ないに拘ら
前へ 次へ
全45ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング