があるさ。」
「ぢや、氣紛《きまぐれ》で私《わたくし》を虫干《むしぼし》になさるんですか。」
「然《さ》うさ、氣紛《きまぐれ》でもなけア、俺《おれ》にはお前を虫干にして遣《や》る同情さへありやしない。正直なところがな。」と思切《おもひき》ツていふ。感情が昂《たかま》ツて來たのか、瞼《まぶた》のあたりにぽツと紅《べに》をさす。
「其樣《そん》なに私《わたし》が憎《にく》いんですか。憎いなら憎いやうに………」と嚇《かつ》とした躰《てい》で、突ツかゝり氣味《ぎみ》になると、
「いや、誰も憎いとは謂《い》はんよ。憎いんなら誰に遠慮《ゑんりよ》も義理もあるもんか、とツくに追《お》ン出《だ》して了《しま》ふさ。俺《おれ》のは憎いんでもない[#原文まま]ければ可愛《かあい》いといふんでもない………たゞしツくり性《しやう》が合はんといふだけのことなんだ。趣味《しゆみ》も一致《いつち》しなければ理想も違ふし、第一人生觀が違ふ………、おツと、またお前の嫌《いや》な難《むづか》しい話になツて來た。此樣《こん》なことは、あたら口《くち》に風《かぜ》といふやつなのさ。」
「ぢや、すツぱりとお暇《ひま》を下すツた
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