心に錘《おもり》がくツつい[#「くツつい」に傍点]てゐるか、言《ことば》にしろ態度にしろ、嫌《いや》に沈むでハキ/\せぬ。加之《それに》妙にねち/\した小意地《こいぢ》の惡い點があツて、些《ちつ》と傲慢《ごうまん》な點もあらうといふものだから、何時《いつ》も空を向いて歩いてゐる學生《がくせい》等《ら》には嫌はれる筈だ。性質も沈むでゐるが、顏もくすむでゐる、輪廓《りんくわく》の大きい割に顏に些《ちつ》ともゆとりが無く頬《ほゝ》は※[#「※」は「炎」に「りっとう」、230−下13]《こ》けてゐる、鼻は尖《とが》ツてゐる、口は妙に引締ツて顎《あご》は思切つて大きい。理合《きめ》は粗《あら》いのに、皮膚の色が黄ばんで黒い――何方《どちら》かと謂へば營養不良《えいやうふりやう》といふ色だ。迫《せま》ツた眉には何《な》んとなく悲哀《ひあい》の色が潛《ひそ》むでゐるが、眼には何處《どこ》となく人懷慕《ひとなつこ》い點《とこ》がある。謂《い》はゞ矛盾《むじゆん》のある顏立だ。恐らく其の性質にも、他人には解《わか》らぬ一種の矛盾があるのではあるまいか。
彼は今別に悲しいとも考へてゐない。然《さ》うかと謂
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