から、貴方《あなた》はおえらいのでございますよ。」と打突けるやうに謂《い》ツて、「それぢや、これからもう、家が淋しいの冷《ひやゝか》だのと有仰《おつしや》らないで下さいまし。無能力な動物に何も出來やう筈がございませんわ。」
「フム、他《ひと》の言尻《ことばじり》を攫《つかま》へて反抗《はんこう》するんだな。」
「いゝえ、反抗は致しません。女に反抗する力なんかあツて耐《たま》るものですか。」と澄《す》ましきツて謂《い》ツて、「時にもうお午《ひる》でございませうから、御飯をお喫《あが》りなすツては?………」
「俺《おれ》は尚《ま》だ喰ひたくない。」
「でも私《わたくし》はお腹が空《す》いて來たんですもの。」
「ぢやお前勝手に先に喫《た》べれば可《い》いぢやないか。」
「だツて、然《さ》うは參りません。」
「妙なことをいふね。お前は何時《いつ》もお午《ひる》をヌキにして、晩の御飯まで俺《おれ》を待ツてゐる次第《しだい》でもあるまい。」
「そりや然《さ》うですけれども、家《うち》にゐらツしツて見れば、豈夫《まさか》お先へ戴くことも出來ないぢやありませんか。加之《しかも》ビフテキを燒かせてあるの
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