い》で、男に向ツて、男が女を離れて生存することが出來ないかのやうな態度を取ツてゐるのだ。現《げん》にお前だツて然《さ》うぢやないか。俺《おれ》が幾ら體が虚弱だからと謂《い》ツて、お前といふ女は、女といふ男を離れて、而《しか》も妻《つま》として立派に生存して行かれるか。ま、考へて見ろ、俺が死んだら何《ど》うする? 其の癖《くせ》お前は、俺の體が虚弱《きよじやく》だとか、俺の性質が陰氣《いんき》だとか謂《い》ツて、絶えず俺のことを罵倒《ばたう》してゐる、罵倒しながら、俺《おれ》に依ツて自己《じこ》の存立《そんりつ》を安全にしてゐるのだから、こりや狐よりも狡猾《かうかつ》だ。何《ど》うだ、お前はこれでも尚《ま》だ、體の強壯なのを自慢として、俺を輕侮《けいぶ》する氣か。青い顏は、必ずしも紅い顏に壓伏《あつぷく》されるものぢやないぞ。」と言訖《いひをは》ツて、輕く肩を搖《ゆす》ツて、快《こゝろよ》げに冷笑《せゝらわら》ふ。
近子《ちかこ》は唇《くちびる》を噛《か》みながら、さも忌々《いま/\》しさうに、さも心外《しんぐわい》さうに、默ツて所天《をつと》の長談義《ながだんぎ》を聽いてゐたが、「です
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