とずさり》した。そして妄《やたら》と頭を押へて見て、また頭を振つて、ふら/\と其處らを歩※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、232−中段6]ツてゐた。……かと思ふと、突如《だしぬけ》に、
「僕は、何んだか頭の具合が惡くなツて來たですから……」
と謂捨《いひす》て、眞ツ蒼になツた顏で、一度ズラリ室内を見※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、232−中段10]して、さツ/\と解剖室を出て行ツて了ツた。解剖臺に据ゑられた少女の屍體は林檎賣の娘の其《それ》であツた。助手や學生は呆氣《あつけ》に取られて、互に顏を見合はせながら、多分腦貧血でも起したのであらうと謂合ツてゐた。
(明治四十年三月「中央公論」)
底本:現代日本文學全集84「明治小説集」筑摩書房
1957(昭和32)年7月25日発行
※本作品中には、今日では差別的表現として受け取れる用語が使用されています。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、あえて発表時のままとしました。(青空文庫)
入力:小林徹
校正:関延昌夫
1998年9月29日公開
2001年3
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