まるで畜生道だ!」と、喚めき込んで来た。
「出て行け! 出て行け! 出て行って貰おう。お前たちを一刻もここにおいておく訳には参らぬ」
 お坊さんは劇しい逆上で、息切れがしてしょうがないように、眼と鼻と口で一緒くたに息を吸い込んだ。
「ふ、ふん……」
 支那服がお坊さんの袖の下でくすりと笑った。
「まるで餓鬼畜生だ。飼犬を殺して、あろうことか、この尊い仏地を穢して煮て喰おうというのだ。浅間しい畜生道の仕業だ。お前等のような堕地獄の徒輩《やから》は一時も、ここに置く訳には行かん!」
 黙って骨をはずしていた黒眼鏡が、
「喧ましいわ! 糞たれ坊主!」と、ふいに喚めき唸めいたかと思うと、握っていた骨を土間に叩きつけた。「糞、豚小屋みたいな空屋に俺たちを叩き込んで置いて、手前は寄附を強請《ゆす》って世の中の人間を瞞しこんでいるんじあねえか。利いた風な口を利くねえ!」
「よし。貴様、よく覚えていろ! このわしの手に仕末ができなければ、ちゃんと警官がある。きっと追払ってくれる。追い出さずに我慢がなるものか!」
「おお! やって見ろ! 野良犬の替わりに、こんどは手前の番だ! 濡板に這いつくばって後悔す
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