放浪の宿
里村欣三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)午《ひる》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|好き《ハラショ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]

×:復元された伏せ字
(例)生血[#「生血」に「×」の傍記]

*:伏せ字
(例)一気に********************
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 午《ひる》さがりの太陽が、油のきれたフライパンのように、風の死んだ街を焙りつけていた。プラタナスの街路樹が、その広い掌のような葉身をぐったり萎《すぼ》めて、土埃りと、太陽の強い照りに弱り抜いて見えた。
 街上には、動く影もなかった。アスファルトの路面をはげしく照りつけている陽脚に、かすかな埃りが舞いあがっているばかりで、地上はまるで汗腺の涸渇した土工の肌のように、暑熱の苦悶に喘いでいるのだ!
 この太陽のじりじり焼きつける執念深さから、僅かな木影や土塀の陰を盗み出して、そこにもここにも裸形の苦力《
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