よけようとした女の膝を、心よく受けた。俺は快楽に酔った。この快楽を放浪者に与える淫売婦もまた尊い犠牲者であると感じた。女は………………を、………………に隠した。
 莨《たばこ》に火をつけた。女は俺の顔をみて、にやりと笑った。俺は女の無邪気な皮肉を眼の色に感じた。
 ドアをノックする音がした。女は驚いてベットの敷布を体に巻きつけると、急いでドアの鍵をはずした。猶太《ユダヤ》の赤い顔のおかみが、女にカードを渡した。そして何か言った。女はそれを俺に示して、テーブルの上の銅貨を拾ってみせた。
 俺は皺ばんだ紙幣をベットの上にひろげて、女にいいだけ取れと手真似した。
 女は時計を描いて、時間表をつくって二時間を示すと、紙幣の中から二円とった。そしてその金をおかみのポケットにねじ込んだ。猿のような赧ら顔のおかみは、にこつき[#「にこつき」に傍点]もせずに、ドアを閉めて去った。女は敷布をはずして、水色の服に着更えると、乱れ髪を繕った。
 俺はもう出て行かなければならないことを悟った。――だが俺には出て行くところがなかった。ここを無理に出てみたところで、不潔な見知らぬ街と、言葉の通じない薄汚ない支那人
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