、苦力を足で蹴飛ばしている訳だから。苦力頭が昼ごろ見廻りに来たが、その時も俺に見向きもしなかった。アバタ面を虎のようにひんむいて、苦力どもを罵っていた。
昼飯の時、苦力のひとりが俺にマントウと茶碗に一杯の塩辛い漬物を食えと云って突き出した。いくら腹が減っていても、バラバラした味気のないマントウは食えなかった。塩辛い漬物を腹一杯に食って、水ばかり呑んだ。
仕事を終った時は流石《さすが》に疲れた。転げそうな体をようやく小屋に運んだ。
苦力たちは、用意の出来ていた食物を、前の空地に運んで貪《むさぼ》りついた。一日十五六時間も働いて、日の長いのに三度の飯は腹が減るのは無理もなかった。俺は腹が減り切っていたが、マントウには手が出なかった、熱い湯を呑んで、大根の生まを噛《か》じった。そして房子に入った。土間の入口の古い机に倚《よ》って、酒を呑んでいた苦力頭が俺をみて、はじめてにっこりとアバタ面を崩して笑った。そしてブリキの盃を俺に突きつけた。俺は盃をとるかわりに腕を掴んで、 ――大将! 俺を働かしてくれるか有難い――と叫んだ。苦力頭は、俺の言葉にキョトンとしたが、感じ深い眼で俺を眺め、そして
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