慰めるように肩を叩いて盃を揺ぶった。――やがて喰い物にも慣れる。辛抱して働けよ、なア労働者には国境はないのだ、お互に働きさえすれば支那人であろうが、日本人であろうが、ちっとも関ったことはねえさ。まあ一杯過ごして元気をつけろ兄弟! ――苦力頭のアバタにはこんな表情が浮かんでいた。俺は涙の出るような気持で、強烈な支那酒を呷《あお》った。
[#天より16字下げ、地より2字上げで](大正十五年六月「文芸戦線」)



底本:「日本現代文学全集 69 プロレタリア文学集」講談社
   1969(昭和44)年1月19日初版第1刷
   1980(昭和55)年5月26日増補改訂版第1刷
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
常用漢字表、人名漢字別表に掲げられている漢字は、新字にあらためました。
繰返し記号「ゝ」「ゞ」は、仮名に書き換えました。
拗促音は、小書きしました。
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身
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