に、素早く鞭の蔓が閃めいて、裸形の背中を鋭くはためきつけたのだ。
「畜生! 太々しい野郎どもだ」
血迷った高村は、すかさず第三の男に襲い掛ろうとした。右手で高く鞭を振り廻した。
「待て! 高村、一体どうしたというのだ?」
隊長が怒鳴った。
「はッ、野郎どもは始末におえない横着者なのです」
彼は血走った眼を無念そうに瞬いた。そして直ぐに走り出そうとした。
「待て! 彼奴等は何が不足なのだ?」
「は、賃金の値上げをしろというんです。奴等の意地悪い手なんです。こっちの弱味につけ込んで無理を通そうという腹なんです。Nまでは四日行程ある――そこにつけ込んでいるのです」
「一体、お前は彼奴等にどれだけ呉れてやっているんだ」
「はッ、それは隊長、隊から支給されているだけに――」
「黙れ、黙れ、嘘をつくか。俺が少しも支那語を解さないと思うか? 俺に彼奴が要求する手が見えないとでも言うのか※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 俺はみんな呑み込んでいるのだ。」
高村は黙りこくってしまった。そして支那浪人特有の虎髯を、口惜しげに引き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]った。
「おい、高村!
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