一体お前はどうするんだ。この輸送が遅延する責任をどうするんだ。貴様等は、実に悪辣な利益を貪る以外には、少しも国家的観念がないのだ。俺を侮辱し切っているのだ。それでなければ」
「いいえ、隊長! 彼奴等のなかにはボルシェビキイの手先が藻ぐり込んでいるのです」
「え、何んだと※[#疑問符感嘆符、1−8−77]」
 隊長はさっと顔色をかえてせき込んだ。
「は、きっとそれに違いないのです、彼奴等を、あんなに執拗に、意地悪くひねくらせるのは、ボルシェビキイの手先のためなんです。でなければ――まったく例のないことなのです」
「何んと! ボルシェビキイだと」
「そうです。それに違いないのです。ボルシェビキイの戦術は、敵の軍隊に謀叛を起さしめ、叛乱せしめるのが得意なのです。彼奴等はその手段に乗せられているのです。そしてまんまと、ボルシェビキイは、本隊の輸送を遅延せしめようという計劃なのです。それに違いないのです」
「うぬ、畜生! 彼奴等の手だてに乗って堪まるものか。軍曹! 軍曹! 高村! よし関わぬ。動かぬ奴は片ッ端しから撃ち殺ろせ」
 隊長は鞍の上に伸びあがって、唸るように叫んだ。

        
前へ 次へ
全13ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
里村 欣三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング