四
忽ち、そこには非道な暴虐が持ちあがった。剣と銃剣の襲撃に、苦力たちの集団は、一たまりもなく崩れて、云いようのない悲鳴叫喚が、緑の曠野を四方に飛び跳ねた。
「遁走する奴は撃て! 撃ち殺すんだ!」
隊長は怒鳴った。そして彼は手を合わせて、哀訴懇願する苦力の一人を輜重車の車輪に追いつめた。
ぱッと銃がなった。
その向うで、苦力が草のなかに手を拡げながらのめり込んだ。同時に、隊長は振りかぶった剣を斬りさげた。
「あッ!」
苦力は仆れた。仆れながら彼は、手を合わせて二の剣を避けた。
「よし。車につけ!」
血だらけの苦力は車に這いあがった。それを見澄ますと、隊長はすぐに乗馬を躍らせて次に跳びかかった。
高村が後列の苦力を、拳銃で輜重車の上に追いあげていた。その脚元には、傷ついた苦力が二人血だらけになって、埃りっぽい土を手足で掻き廻していた。
ぱッ!
ぱッ!
草むらに這い込む苦力が、そこでもかしこでも兵卒の発砲にのめり、倒れた。
陽はまだ高かった。
輜重車は動き始めた。
誰れも黙っていた。――
やがて捲き起されて来た土煙に、長い隊列はすっかり包まれてしまった。鞭の
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