靡いて、路上に輜重車が、丁度壊れかかった家具のように抛り出されていた。苦力達は青草の原に隊列を離れて寝そべり、あぐらを組んで、兵卒や苦力頭が声高く罵り怒鳴り、威嚇する銃剣や鞭に対して、執拗な沈黙と拒否の態度を固持していた。馬は思い思いに引具のついたままに、輜重車を青草のなかに引きずり込んで、草を頬張っていた。
「何んという奴等だ!」
 隊長は憤慨した。こんなことは、日清日露の役にも経験したことがない。侮辱だ。わが陸軍の侮辱だ!
 隊長は馬腹に拍車を蹴込んだ。
「軍曹! つづけ。豚ども! 嫌でも応でも動かして見せるぞ」
 隊長と軍曹の姿は忽ち、土煙のなかに捲き込まれてしまった。土煙を蹴あげる鉄蹄ばかりが、白く斜な陽に光った。そして瞬間のうちに遠のいた。…………

        三

 怒った隊長は草のなかへ、いきなり馬を乗り入れた。脊丈に伸びた青草が、馬蹄に蹴散らかされ、踏み折られて、そこでも、かしこでも名状することのできない悲鳴叫喚が湧きあがり、吹きあがって、それが馬に追われて草をかき分けながら逃げ惑う苦力達によって四方に撒きちらかされた。
 隊長は剣を抜き放っていた。
「馬鹿! 動
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