ゃて」
 と、独語ちながら、にやりと笑った。高村もつり込まれて笑いかけたが、ふと起った蹄鉄の地面に喰い込むような強い響きに驚いて振返った。
「あッ!」
「何んじゃ?」
 隊長も思わず振りむいた。と、そこへ土煙を蹴たてて、古田軍曹が馬を馳せて跳び込んで来た。顔も軍服も土煙にまびれて軍帽のふちから赭黒い汗がだらだらと流れ出ていた。彼は手綱をしぼると、挙手の敬礼をした。はずみを喰った乗馬が、青草のなかに前脚を踏み込んだ。
「隊長殿。苦力どもが坐り込んで、どうしようとも行進を肯じないのであります。彼奴等は石のように坐り込んだまま動かないのであります。はッ」
「何んだと? 動かない!」
 隊長は忽ち顔色をかえてせき込んだ。
「は、彼等は日給の増額を要求しているのであります」
 ふいに高村が叫んだ。
「うぬ、畜生!」
 唸ったかと思うと、彼は手荒く手綱をひねって、馬をかえすと、土煙をあげて跳び出した。
「また、高村の野郎奴、やりおったな」
 隊長は複雑な顔色で呟いた。「奴等は少しも利益を貪る以外には、奉公の観念がないのだ!」
 ずっと、隊列は後に遅れていた。そして濛々とした土煙は、曠野の彼方に吹き
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