写説が常識的世界観に符合するところに強味をもっているのに対して、記号説は科学的世界像に符合するところに長所をもっている。それに相応して模写説と記号説との間には、知識の見方についてのみでなく、存在の見方についても相違がある。記号において表わされるのは物であるよりも物の関係である。そして近代科学の特色は、物を物としてそれだけに研究するのでなく、物と物との関係を研究すること、或いはむしろ物を関係において研究することにある。近代科学は物概念において思惟するのでなく、関係概念において思惟するのである。古代的思惟においては、物といわれる実体があって、関係はそれに附帯するものと考えられた。しかるに近代科学においては、物は関係に分解され、関係から物が構成される、関係は法則として現わされ、物は諸関係の網の結び目の如く考えられる。物の知識は模写でなければならぬとしても、関係の知識、法則の知識は模写でなく、むしろ記号であるといわれるであろう。概念、数、公式等はそのような記号である。
 しかしながら知識は記号であるとしても、記号は何物かの記号でなければならず、記号されたものに対する関係を離れて記号は記号の意味
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