のうちにあるのである。それは人と人との関係、人間的関係を指している。カントが、他の人を物としてでなく、人格として取扱え、ということを道徳的命令として掲げたのは、道徳の根本現象を明かにしたものということができる。道徳の根本概念は我と物でなく、我と汝である。
道徳はすべて我と汝の関係の認められるところに成立する。そのことは人間を単に他との間柄においてのみ考えて、自己自身として考えないということではない。我々が人格であるのは、自己が自己に対する関係においてであって、他に対する関係においてではないといわれるであろう。しかし人間がこのように自己自身において道徳的存在であるということも、自己が自己に対して我と汝の関係に立ち得るということに基いている。私は私自身に対して汝と呼び掛ける。「汝為すべし」という道徳的命令は、私が私自身に対して汝と呼び掛けるのであり、そこに道徳の自律性がある。道徳を単に自他の間柄においてのみ考えるのでは、道徳の自律性は考えられないであろう。道徳的に自覚的であるということは、自己が自己に、自己を汝として対することである。カントが良心を、主体の主体に対する関係として、法廷に譬
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