い。初めからかやうな態度をもつて臨めば、どのやうな本を讀んでも益はないであらう。眞の讀書においては著者と自分との間に對話が行はれるのである。しかも自分が勝手な問を發するのでなく、自分が問を發することは實は著者が自分に問を掛けてくることであり、しかも自分に問題がなければ著者も自分に問を掛けてこない。かくして問から答へ、答は更に問を生み、問答は限りなく進展してゆく。この對話の精神が哲學の精神にほかならない。
哲學の個々の部門、例へば歴史哲學、社會哲學、藝術哲學、道徳哲學、宗教哲學、等々について、私の乏しい經驗の範圍内でもなほいろいろ注意しておきたいことがあるが、與へられた紙數も盡きたから、ここでひとまづ筆を擱くことにする。
底本:「三木清全集 第一巻」岩波書店
1966(昭和41)年10月17日発行
初出:「圖書」岩波書店
1941(昭和16)年3〜5月
入力:石井彰文
校正:川山隆
2008年1月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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