政治の論理と人間の論理
三木清

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)脆弱《ぜいじゃく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](『セルパン』一九三七年八月号)
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 トハチェフスキー元帥らの銃殺および最近ソヴェートにおける清党工作は世界を驚かせた。元来この事件についてはいまだ正確な事実を知り得ず、伝えられることの多くは臆測の要素を含み、あるいは何らかの為めにする宣伝ですらあるようである。したがってこの事件に対する我々の批評も、単なる感想にとどまらざるを得ない。
 この事件によってソヴェート政権および赤軍が脆弱《ぜいじゃく》になったとは考えられないであろう。もちろん、かような事件が起ったということは、そこに何らかの弱点が存在していたことを証しているに違いない。しかし他方その弱点がこの事件によって救治され、かの国の政治上ならびに軍事上の体制はかえって強化されたという推測も成り立ち得るのである。かような荒療治をともかく強行し得るということ自体がすでにスターリン政権とソヴェートの統一との鞏固《きょうこ》さを示しているといい得る
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