云ふことも肝要なことであると思はれます。独逸の大学で学生に転学の自由が与へられてゐるのはそのひとつです。学生に聴講科目の自由な選択が許されてゐるのもそのひとつです。そのためにこちらの学生では、例へば哲学の学生であつて単に哲学だけを勉強してゐる者は極めて稀で、多くは他に副科目として、或ひは数学や自然科学、或ひは神学や歴史などの特殊科学を傍らに研究してゐます。学生と教授とゼミナールの三つがいつでも親密な関係を保つてゐると云ふのもそのひとつです。凡てのものが綜合的にはたらかなくてはなりません。例へばひとつのゼミナールの文庫をよくするためには、成長しつつある学者を必要とします。本当の研究に役立ち得る文庫は、真面目な研究者が自分の研究を進めてゆくに随つて必要を感じる書物を系統的に調べ集めることによつて初めて出来るのです。私は学問的意識の綜合作用[#「学問的意識の綜合作用」に傍点]が学問の成長してゆく条件であると考へずにはゐられません。学問の綜合的精神を発揮するための綜合大学の制度が、単に経済的管理を便宜にするため、中央集権的支配をe易にするため、或ひは学者が彼等の墻壁を堅固にするための機関となつ
前へ
次へ
全22ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三木 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング