った、それから突然小供らしい笑い声がその緊張を破った。ブラウンの説が莫迦々々しいので、イワンがけなし始めた。
「フン! じゃ昨晩私等が大きな死体を長椅子の上に引きずらなかったですかい? あやつは庭へ忍び込まなかったのですかい?」
「庭へかな?」とブラウンは考えこんでくりかえした、「いや、全部ははいらんかな」
「冗談じゃない、庭へはいらん者がここは居る訳がない」と博士が叫んだ。
「必ずしもそうではない」ブラウンは薄笑いをして云った、「博士、さて次の疑問は何でしたかなア?」
「あなたはどこかお悪いようですね」シモン博士は鋭く叫んだ、「だが御のぞみとあれば、つぎの疑問をお訊きしましょう。ブレインはどんな風にして庭から出て行ったのですか?」
「いやブレインは庭から出て行《ゆ》きはせん」坊さんはなお窓の外を眺めながら云った。
「庭から出て行《ゆ》かん?」と博士は爆発した。
「そっくり出て行《ゆ》き居ったわけではないて」と師父ブラウンは云った。
 シモンはたまりかねて拳を振りまわした、「庭から出て行《ゆ》かんものが、ここに居らん訳がない」と彼は叫んだ。
「必ずしもそうではない」と師父ブラウンが云っ
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