四に、同様の事情の下にですな、どうしてブレインが庭から逃げ出す事が出来たでしょう?」
「そして第五は」とオブリアンは英国の坊さんがそろそろとこちらへ来る姿にジーッと眼をとめて云った。
「第五はつまらない事ではあるが、私には不思議に思われます。私は最初首がどういう風に斬られてるかを検べた時に、犯人は一度ならず斬りつけたらしいのです。ところがよく検べてみると、その断面には幾つもの斬傷のある事がわかりました。これは首が落ちてから斬りつけたものです。ブレインは月明りの中によく敵の姿を見ながら敵の身体を斬り苛《さいな》むほど敵の憎んでおったんでしょうかな?」
「実に凄惨だ!」とオブリアンは身慄いをした。
小男のブラウン坊さんは彼等が話してる間にそこへ来た。そして持前の内気さで話しの終るまでジッと待っていた。それから彼はブッキラ棒に言った。
「これはお邪魔いたしますな。しかし新事件をお話しするために使者に立ちました!」
「新事件?」とシモンはくりかえした、そして眼鏡越しに、傷ましげに彼を見つめた。
「はい、どうも気の毒にな」と師父ブラウンはおだやかに云った。「第二の殺人事件が起ったのですて」
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