、冷静に何か思いを凝らす様であった。それから彼はオブリアンの方へ叮嚀に顔を向けた、「司令官、君はこの軍刀が証拠品として必要な場合は、いつたりとも提供して下さることと信じます。それまでは」とガチャガチャなる鞘にこの刀身をおさめながらつけ加えて言った、「とにかく一応お返ししておきましょう」
二
夜が明けた。だが、疑問の謎は依然として解けなかった。朝飯がすんでから、司令官のオブリアンが庭の腰掛にシモン博士とならんで腰をかけた時に、鋭い科学的な頭の博士がすぐにまた死体の問題を持ちかけた。しかしオブリアンの方はあまり話に気乗りがしなかった。彼の思いは議論等より嬉しい件でいっぱいであった。朝食前にマーガレットと二人で花壇の間を散歩した時、マーガレットが嬉しい返事をしてくれたのであった。
「いやあまり面白い事件でもありませんからな」と司令官は率直に云った。「ことにもう大体解決はついているのですからな。きっとあのブレインは何かの理由であの被害者を憎んでおったので、この庭へ誘《おび》き出した上、私の剣で殺したんです。そしてあやつはにげる時に剣を藪の中へ放りこんで町の方へ逃げて行った
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