て申上げました。オブリアンさんは少し憤っていらっしゃいました。あの方は私の敬意等はあまりお考えになるようには思われませんでしたの、けれど」と妙に笑ってつけ加えた。「あの方も今私の敬意を受けて下ださるでございましょうよ。私はどこへ出ましても、あの方は決してそんな事を遊ばす方ではないとお誓い申します」
ガロエイ卿は娘の方へジリジリと詰めよっていたが、彼は自分では小声のつもりで彼女を嚇《おど》しつけていた。
「お黙り、マジイ」彼はわれるような低声で云った。「なぜお前はこやつを庇うんか? かやつの剣《つるぎ》はどこにある? あやつのいまいましい騎兵の剣《つるぎ》はどこだッ。――」
彼はもっと云込むつもりであったが、娘の妙な眼付、それは一同の視線をも強力な磁石のように吸付けたところの妙な眼付にあってやめてしまった。
「お父様の解らず屋!」とマーガレットは小声ではあるが、敬虔の仮面を抜ぎすてて言った。
「一体何をそんなに発見なさろうというおつもりですの? あの方は私のそばにいらした時には潔白だったのよ。たとえ潔白でなかったとしても、私と一緒にいらっしったのよ。もしあの方がお庭で人殺しをなさった
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