体が発見されまして、首が胴体から斬取られておるのです。シモン博士、あなたはあれを御検視なすったが、あのように人間の首を切断するには、よほどの力が要るものでしょうか? それとも非常に鋭利なナイフぐらいで?」
「さア、ナイフ等ではとても斬れませんなア」博士は顔を蒼くして言った。
「ではそれだけの効力のある刄物について何か御考えがありますまいか?」
「近頃の刄物ではむずかしいですなア」博士は眉間に八の字を寄せて言った。「元来|頸《くび》というものはギスギスと斬るさえ難かしいものです。しかるにこれは美事にスパリとやられてます。まあ鉞《なた》とか昔の首斬斧とか、または古代の両刄の剣《つるぎ》なら出来ますが」
「だって、まア!」公爵夫人はヒステリックに叫んだ。「ここら辺りには両刄の剣や鉞等ありはいたしませんでしょう」
ヴァランタンはなおも眼の前の紙片に何か書つけていた。「どうでしょう」といいながらなおも走書きをつづけて、「[#「、「」は底本では「、」]仏蘭西《フランス》騎兵の軍刀では?」と訊ねた。
扉《ドア》を低くノックするものがあった。一同は何とも理由のつかない理由でヒヤリとした。その氷のよ
前へ
次へ
全42ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング