ったを探究する前に、我々はどうして彼がここにはいるに至ったかを探究しなくてはならんのです。まあおきき下ださい、皆さん。もし私の地位と職務とを信頼して下さるならば、我々は本件に関して、名士諸君の御名前を引合に出さんように処置するという事に考えが一致せんければならないと思うのですが。ここには淑女方も紳士諸君も居られるし、また外国の大使も居られます。もしこれを犯罪事件と見なさなくてはならんものとすれば、そのように捜査せねばならんのです。しかし、そこは私の裁断次第になります。私は警視総監です。私はこの事件を秘密にしておくことが出来るほどの公職にある男です。私が他を捜さくするために私の部下を呼び寄せる前に、私はまず来客諸君の一人一人が本件に無関係である事を立証したいと思います。諸君、諸君の御名誉にかけて、明日《みょうにち》の正午まではお一人でも拙宅から御引取りにならないように、それに寝室も数だけありますし。それからシモン博士、あなたは執事のイワンが玄関に居るのを御存じでしょう、あれは信用のおける男ですから。どうかイワンに外の者を代りに置いてすぐにここへ来るようにおっしゃって下さらんですか。それか
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