野獣性が眼覚め、狼群の長となる、ユニークな物語である。ロンドンは又、「アダム以前」という作品で、人間の原始生活を描写し、半獣生活に現代の過剰文化からの逃れ路を暗示している。
その外、以上の点を基本としているには違いないが、興味一方で書かれたもの。例えば――
バロウズの数種の「ターザン物語」、スチブンスンの「ブラック・エンド・ホワイト」「ジーギル博士とハイド氏」のごとき作品もこの種類に含まるべきものであろうと思う。
最後の傾向として、次のごときものが存在する。
即ち、H・G・ウェルズの諸作品に依って代表されるもの。例えば、「時の器械」に於て、彼ウェルズは一瞬にして数十万年を往復する器械を書き、「眠れるものの眼覚める時」で器械に囚われた社会を暗示的に書いている。
この種の「科学小説」は、今の科学が未来に於て如何に発達していくであろうか。――将来の社会の科学的発達を深淵なる科学的智識の傾倒と、加うるに豊富なる空想力とに依って描出したものを含むのである。換言するなら、最も純粋なる「科学小説」を指示するのである。
以上のような、三つの傾向を私たちは、当今行われている「科学小説」に見る
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