物の標本として取り出した飛竜の雛が忽ち会場の天井の高窓から飛び去って、聴衆が大騒ぎを演ずるなど、大衆的興味をも充分に備えている。
 或は、ジュール・ベルヌの「月世界旅行」とか「海底旅行」などの諸作品もこの類に属するものであろう。その他ヘンリー・ライダー・ハガードの諸作品に見るような、地理学的基礎にたって、風俗上、動植物学上の智識を傾け、アフリカ内地の怪奇を描いたものも然りである。
 つまり、現代の科学の智識を基礎として想像し得る、天空、海中、地下、地上にありとあらゆる不可思議を興味深く書いた作品を含むのであって、多分にロマンチックな傾向を有する類いである。
 第二は、科学的智識に基礎を置いていること勿論ではあるが、加うるに多分の社会的な意義をも併せて含めている種類の作品。――
 その適例は、ジャック・ロンドンの諸作品、例えば「野性の叫び」のごときに見る。
「野性の叫び」は一匹の犬を主人公とした小説で、初めは富豪に愛育されていたが、人に盗まれ、売られ、虐使され或は北アラスカの荒涼たる氷原に橇《そり》を引き、或は愛犬家に撫育されて人の感情に鍛えられ、文化や野蛮の間に彷徨しながら、遂に天性の
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