刷術による芸術――文芸は、近代科学そのものの力をかるラヂオや映画に圧倒されて了わねばならないであろうことは、予測するに決して難くはないのである。
 だから、未来ある若き人たちは「科学小説」を将来の綜合的な大きな文学の発生への必然的な一過程として、一段階として認識し、充分に注目する必要があると思う。それと同時に、もし諸君がかく考え来るならば、諸君は現代文学者の怠惰に抗し、それを文学者たるものの恥と心得、決然として立ちあがらねばならない時に到っているのではあるまいか。
 さて、現に存在している「科学小説」は次の三つの傾向によって分類しうる。
 その第一は、現在の科学の知識に基いて、それを奇怪な形に、一つの事件に結びつけて描いたもの。例えば――
 アサー・コナン・ドイルの「ロスト・ワールド」のごときものである。「ロスト・ワールド」は、既に映画化もされ読者諸君も御承知のように、南米の人跡未踏の内地に、前世界の動物である恐竜や飛竜や類人猿なぞが棲息している高地を探険する物語で、科学的智識に豊富なる空想力を加えて創造されたのである。その探険隊が帰還して倫敦《ロンドン》に於ける報告会を開催するや、実
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