やがて再び輸入され、「探偵小説」は遂に現今、諸君が眼前に見るように隆盛を呈しはじめるに至ったのである。併し、「科学小説」は残念ながら、未だ未発達の状態に残された儘である。だが、当然「科学小説」も将来着目されて然るべきであり、その機運に向っているといわなければならないのである。
 だが、その困難な所以は、特に日本に於て困難な所以は、屡々繰返されたがごとくに、「科学小説」が非常に豊富な智識と空想力とを必要とすることである。日本の国民が一般に科学的智識に欠けていることは勿論であるが、特に今日の我国の文学者が科学的智識を深く研究しようなぞという殊勝な考えをもつもの皆無であり、現在のようなナマケモノでは、註文するのが反って無理だといわねばならない状態にある。これは憂うべきことに違いない。何故なら、将来の文学者たるものは、坐して、あらゆる智識から眼をそむけ、自分と自分の周囲をのみ眺めて、狭い世界を書いているだけでは何うしても駄目だからである。政治も、経済も、科学も、社会も、一切の専門的な智識をマスターし得、それらを綜合することに依って、作家としての一つの立派な見識を創造するに非ずんば、将来に於て印
前へ 次へ
全135ページ中104ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング