のであるが、未だ今日では、これらの何れもが単に娯楽的な興味より含んでいない状態に置かれていて、そのレベルを抜く作品は殆んど無いといった有様なのである。併しながら、「科学小説」はもっと発展しなければならないし、又近き将来に於て、益々隆盛を見るに違いないのである。
 私は、次のように断言し得ると考える。即ち、正しい科学の発展の方向が優れた文学によって科学的に綜合され、統一され、暗示されて、正当に、明確に、科学の進歩すべき方向が指し示されるであろう時、その時こそ、かかる綜合的な一大文学は自ら社会革命の意義と任務を充分にその肩に担い得るであろう、と。
 何故か。今日の烈しい科学の発達の速度を見給え。この科学の行く処を知らない加速度的発達は、一般人の想像すら許さない有様である。将来の文学の一つの重大な意義と任務は、その科学の発達を読者大衆に説明し、指示することにあるといわねばなるまい。私は、一人のエジソンの頭脳によって、この人類社会の科学的進歩がどの程度に迄発達したか、――極言すれば、人類社会そのものがどの程度にまで進歩したか、――を考えるとき、私たちの社会に於て、マルクス主義者とか、或はその思
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