うした会で、少々の流行品を買う外、悉く、主人が一人で、熱心に、研究している家で買う事にしている。値は、デパートより高いが、品物に対する知識を得る事が多いからである。
 私は、急激に発達するデパートの店員の悉くが、彼の専門的知識をもっていようとは思わ無いが、知識を十分与えるように努力している店主が幾人あるか、聞きたいのである。叮嚀《ていねい》とか親切とかは、既に古い。少くとも、大阪の商人、店員は、品物への知識、それによる客の知識の開発、これが商売を盛《さかん》にする現代的の傾向である――と私は信じる。

  昆布

 ある百貨店を出て、私は勿論、その街つづきを歩くのであるが――私の、小さい時から大阪名物の昆布店は増えもせず、減りもしないで健在である。
 昆布店は、もしそれが東京にあったなら、恐らくは、増えるか、減るか、したであろう。それは、大阪名物であるが故に、東京人をして、一口に、反感を抱かしめて「汚い、昆布を、しがんでやあがる」と、云わしめたが、もし、その効能を、昆布屋の新人が、宣伝するなら、チューインガムよりも販路が広いかもしれない。
 昆布の含むヨードは、乾燥してしまって、何う成
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