ぐったから、京へ向った。
佐々木兄弟が帰った時、この噂は、これも勿論耳に入るし、お新の証言もあり、とにかく山田をと云う事になった。が、それよりも困る話は、来馬に殺された男の父が、来馬を召捕えようとしているし、当然、理由の無いこの殺人は切腹に価する事であるから、同じ来馬を殺すものなら、武士らしい最後を、――それからお俊が、来馬と事を起して、自分らの面目に関係せぬよう――この際の処置は早い方がいゝ、と。
又、説く、山田某、お俊が訊ねてくると共に、甚七の来京を知った。
「召捕えてしまえばいゝ。」
そうして、書状を発して役人に知らせると共に、甚七を呼寄せる手段を講じた。お俊は山田を甚七の所へ、誘出しさえすればいゝと、山越えに雲母阪《きららざか》へかかった。
甚七は昔の侍姿で待っていた。
「珍しい山田君。」
「いろいろまちがいが有ったそうで迷惑だろう。何処《どこ》へ行く。」
「少し話があるが。」
いざと云わば一刀にと、甚七、少し長い間をもたしさえすれば十分に取巻けると山田君。
時に麓からお新が、甚七の後を追うて――その背後《うしろ》より馬上の佐々木
「お新で無いか? 甚七がこの道を行
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