ったと云うがそうか。」
「はい、敵の山田を白状させると今朝程――」
「あの金入はもっておるか――よし、身共の馬に乗れ――何《な》に、気づかいは無い。」
一鞭《ひとむち》、急阪を馳登《はせのぼ》る一方
「山田、逃れぬぞ。」
と、詰よると共に、合図の手、こゝに乱闘始まって、とゞ山田は斬られると共に、お俊が手を負う。何れ逃れぬ命と、甚七がお俊を斬って己も咽喉を――。
そこへ蹄音《ていおん》高く、お新を抱いて馳せつける佐々木
「お新――」
と、微かに来馬甚七の断末魔、左手にお俊の亡骸《なきがら》を、右に泣きくずれるお新の手をとって、今に残る雲母阪の心中物語。
底本:「昭和のエンタテインメント50篇(上)」文春文庫、文藝春秋
1989(平成元)年6月10日第1刷
初出:「文藝春秋」文藝春秋
1926(大正15)年10月
入力:大野晋
校正:山本弘子
2010年4月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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