の許に送ってくれたことだろうて」それから彼は、むしろ悲しげな口調でつけ加えた。「この手もハートルプールにいた時に、あの可哀そうな連中から覚えたのだ。その男は、停車場で手提袋を、その手でやったものだったが、今はある修道院にはいっとるとか。えらいことを知っとるものだて。なあどうじゃな」それから、彼は頭をかきながら本気になって言訳するようにつけ加えた。「わしらはどうも坊主がやめられんて。皆がやって来ては、こんな話をしてくれるでな」
フランボーは内ポケットから茶色の包みをとり出して、バリバリと破いた。中には紙と鉛の棒との外には何も這入っていなかった。彼は巨人のような身振りで立ち上った。そして叫んだのだった。
「俺はお前のいう事が信じられねえ。お前のような田舎者に、そんな真似が出来てたまるけえ。お前は肌につけてるに違えねえ。そっくりこっちに渡さなきゃ――あたりに人っ子一人も居ねえ、力ずくでも取ってみせるぞ!」
「いや」と師父ブラウンは無雑作に言うと、彼もまた立ち上った。「力ずくでも取れますまいぞ。第一に本当にわしは持っておらん。それから、わしらだけじゃあない。他にも人が居るんじゃからな」
フ
前へ
次へ
全44ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング