は――と、恐れながら、御賢察下さりますよう――」
右源太は、こういって
(吾ながら、うまい)
と思った。
「ふむ」
曾川は、暫く、黙っていたが
「同一人が、三、四人も居ると申すのか」
「はい」
「それなら、それで、何故早く、そう申さん?」
「はい――余り奇怪な事柄ゆえ、或は、お取りあげに――」
「重大なことではないか。その方一存で、胸の中へしまっておくべき事柄とは、ちがうではないか」
「恐入りまする」
「今一応取調べるが、その方の討取ったのは確に、相馬大作であろうな」
「はっ」
「よし退れ」
「お耳に逆らって、恐入ります」
右源太は、心の中で、微笑しながら、詰所へ退ってきた。
二十四
「大作が二、三人いる? 馬鹿なっ」
と、一人が、怒鳴った。
「いや、いる」
右源太は、はっきりといった。
「相馬大作は、下斗米将実《しもとまいまさざね》では無いか? 平山塾へいって聞けばすぐ判ることだ」
「然し、下斗米将実だけが、相馬大作と名乗っているだけでは無い、外に――」
「昨日の相馬大作、あれ一人だ。あれが下斗米だ」
「では、拙者の討取ったのは、同名異人だと申すのか?」
「そ
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