、縁側から首を伸ばして、眺めていた。右源太は、油紙を一枚一枚|剥《は》いで、布をとり、綿をとって、蒼白《あおじろ》くふくれて、変色している首を剥出《むきだ》した。
「やー、遠路ゆえ、面体損じておりまするが」
と、曾川の顔を見たくないので、俯いたまま、左手を添えて、首を差出して、平伏していた。
首は、睫毛は抜けていたり、脣の皮は剥けてしまっていたが、大作らしい面影は、十分に残っていた。
「何うじゃ」
と、曾川は、左右へ聞いた。
「そうで御座りましょう」
と、二三人が、答えた。
「女狩、何か、外に、証拠の品は?」
「外にと申しますと?」
「刀とか、懐中物とか」
「生憎く――御承知の如く、彼大作なる者は、十分に変装致しておりまして、手前、討取りまする節は、小者の姿でおりましたが――」
「成る程――して、中々、手者《てもの》だと聞くが、尋常に名乗りかけて討ったか」
「中々――お恥かしい話で御座りますが、欺して討取りまして御座ります」
「欺してな?」
「尋常の太刀討では、手前共、五人、七人かかろうとも敵いませぬゆえ、酒に酔わさして、縄で足をとって、倒れるところを、斬りまして御座ります」
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