の附人ってのが七八十人もいたが、一人も斬られずに、無事にお前さん上野を討取ってきたってのだから、何んと、凄い腕じゃ御座んせんか――ねえ、貴下」
「全く――」
「然もさ、その四十七人の中にゃあ、お前さん何んとかって、下郎が入っているって話ですぜ」
 吉右衛門は、はっとした。そして、小さくなって、湯槽《ゆぶね》の隅へ入った。朧気《おぼろげ》に、四人の男の影が見えていた。
「年二両しか貰わねえのに、命をすてて尽そうってんだから、こいつが、先ず、忠義の大将だね」
「大将は誰だ」
「大石って、国家老だってことだ」
「ふうん、どっしりして、大将みたいな名だのう。四十七人って、本当に、四十七人なのかい」
「吉良の邸の玄関に、ちゃんと、討入の口上と名を書いたのとが残っているんだ。江戸じゃあ、もう瓦版が出て、姓名から、石高まで判ってるそうだ。明日になりゃあ、判るだろう。それとも、遅く着く人が、持っているかも知れねえ」
「吉良《きら》れ上野、首無しの段、あわわわわ、話をして、うだっちまった。頭がふらふらすらあ」
 一人が、勢いよく、湯をはねて飛出した。そして、吉右衛門に
「御免よ」
 と、声をかけて
「貴
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