が、一枚二十銭の稿料である。そして――まあ、何んなものか、諸君はやってみて、その困難さを知るがいい。
上巻は出たが、下巻は出ぬ。下巻が出るまで待つ訳に行かぬから又、読んでは書いたが、下巻へかかって暫くすると勇気を恢復《かいふく》して、とうとう二百枚にちぢめたが、この本はもう何処にもあるまい。発行所は、今の精文堂であったらしい。四十円もらった時には、然し、うれしくって、嘗て一度も、先生の家へ、物などもって行った事の無い私が、女房に鯉をもってやらせた。そして七円で、長火鉢を買った。初めて稿料をもらった記念にである。この長火鉢は、震災でなくなってしまった。
三十五
所で、ここに、一つ秘密を書かなくてはならぬが、ある日、私が戻ってくると、女房と、友人の某とが、炬燵の中に入っているのである。勿論、坐っていたが、炬燵へ入るには大抵、差向いを原則とするのに、友人と女房とは、三方を空けておいて、一方に二人が固まって、くっついているのである。私は、見るべからざる物を見たような感じで逃げ出そうと思ったが、小さい家で、格子も、障子も開けて見てしまったのだから、何うする訳にも行かない。二人は、
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