の感じるような事は感じない。
(何んだつまらん)
 と、思って眺めていたが、今考えると、惜しいものである。何んだつまらんと思うもう一つの理由は、表看板に、海中で、海女が、蛸や、魚と、格闘している図が描いてあるから、その通りの事をして、見せるのだと考えていたせいもある。それが、全くちがったのだから、失望した。
 この海女の前に、へらへら踊があった。黄色い手拭で、頬冠りをして
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へらへったら、へらへらへ
はらはったら、はらはらは
へらへらへったら、へらへらへ
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 と、唄いながら、坐ったままで、扇を動かしているだけの、智慧の無いものであるが、それが、相当人気があったのだから、大部、今日と、人心がちがう。初めて見ただけに、この印象は、強く残っている。
 その次に見たのは「改良剣舞」、女ばかりで、剣舞の真似と、芝居の真似とをするものであるが、これは、大変、気に入って
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頃は元暦元年の
  どんどん
源平、須磨の、戦いに
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 いつか、放送局で、この節をやったが、私も中々上手である。すっかり、憶えてしまった。
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